備長炭が高級クッキング燃料として好まれるのは、炭質がノコギリでも切れないほどかたく、 火もちがよいこと、硫黄の成分が少ないのでにおわないこと、高温で製炭されているので水分 が少なく、焼きもの料理に使うとからりと焼けるなど、燃焼性にすぐれていることと、徹妙な 温度(火力)調節が、ウチワ一本ですばやくできることである。 燃焼温度は500度くらいで一定しでいて、あおぐと1000度くらいまでに上昇する。 そのままにしでおくと、表面に灰の膜ができて熱が弱まる。 燃焼すると、表面から2〜5ミクロン(3ミクロンが最も多い。1ミクロンは1000分の 1ミリ)の波長の近赤外線を出す。 この近赤外線は肉の表面に吸収され、熱となり、肉の組識をかためて、うまみ成分を逃がさな い。 このうまみ成分を逃がさないということも、炭火焼きの大きな特徴のひとつである。 うなぎのかば焼きやバーベキューなど、直接加熱する焼きもの料理は、熱が高すぎるとこげ て味がまずくなり、低すぎると生ぐささが消えない。 そこで高からず、低からず、ウチワ一本で料理人の意のままに火加減ができるというところに、 備長炭でつくる料理のおいしさの秘密がかくされている。 「電気の熱やガスの熱では、こういうわけにはいかない」と、調理のプロも絶賛する。 一般に、炭火焼きがおいしい理由のひとつは、木炭には水分が少なく(約10%以下)、水 素も0.1%ぐらいで、燃焼ガスに水気が少なく、パリツと焼けるからである。