1.択伐の起源
 択伐施業の歴史については、記録はないが推定するところ2百数十年の歴史が言い伝えられている。
備長炭はウバメガシ、カシ等の優良樹種を原木として生産された優秀な木炭であり、当時は3俵(45s)
〜5俵(75s)を生産する極めて小規模なる炭窯で谷間、背深部のいずれを問わず窯を構築し需要に応ず
るために後良樹種ばかりを抜取りし、現在択伐施業とは、およそ反対の施業をしていたが経済の変動とと
もない森林の集約利用による優良樹種の保護、改良の必要に迫られて択伐の推移をたどったものである。
つまり、紀州藩が木炭の生産を奨励したために原木の不足が生じ択伐施業が推進された。
この施業の技術の推移については古い文献はないが長い間の薪炭林経営における経験から生み出したもの
であり、特にウバメガシ等の成長遅鈍な樹種については、天然の成長に任した皆伐放任主義の方法では永
い輪伐期を要し、成長旺盛な他樹種に被圧され薪炭林としての成長は困難であったと伝えられている。